今一番勢いのある漫画といえば鬼滅の刃ではないでしょうか。
アニメの完成度もかなり高く、原作の勢いもとどまるところを知らないほど。
これから先どのような物語が繰り広げられるのか全く予想ができません。
その作者の吾峠呼世晴先生の読み切り短編集である吾峠呼世晴短編集が発売されました。
ようやく吾峠呼世晴短編集を書店で見つけて購入できたのでその感想を現在連載中の鬼滅の刃の紹介を交えて書いていきます。
・鬼滅の刃が好きな人
・鬼滅の刃が気になっている人
・面白い漫画を探している人
鬼滅の刃が好きなら吾峠呼世晴短編集もチェックすべき
鬼滅の刃とは
鬼滅の刃は週刊少年ジャンプで連載中の作品。吾峠呼世晴先生の初連載作品でアニメ化を果たしている今の少年ジャンプの看板漫画と言っても過言ではない作品です。
鬼滅の刃の特徴はまっすぐで魅力的なキャラクターたちと彼らやナレーションの独特のセリフ回しが印象的な点です。悪鬼滅殺を掲げた鬼狩りと鬼といういわゆる正義と悪のわかりやすい構図でまさに王道のストーリーかと予想させますが、内容は奥が深く、この先の展開は全く予想ができません。
もちろん主人公側が鬼を狩るので最終的には鬼に勝つ構図は見えているのですが、それまでの過程や勝つためにどうすればよいのかといった詳細部分は作者にしかわからないほど複雑で読者は何度読み返しても楽しめる作品になっています。
それぞれのキャラクターの性格が個性的で光っているので、主人公を含めその仲間たちの会話のやり取りを見ているだけで楽しめるに違いありません。
吾峠呼世晴短編集とは
吾峠呼世晴短編集はそんな鬼滅の刃が生まれる前の構想を含んだ読み切り作品を読むことができる短編集となっております。
週刊少年ジャンプで時折開催される近未来杯で本誌に掲載された作品もあり、作者の執筆活動初期の画風や作風を見る事ができます。
今回の短編集を読んで、吾峠呼世晴先生の画風は週刊少年ジャンプらしくない画風だなと思いました。今でこそ週刊少年ジャンプらしい画風に近づいてきていると思いますが、読み切り当初の画風は荒削りでデフォルメも弱くギャグテイストも薄いです。独特のペンタッチはこのころからずっと今にも残っていますが、それは作者の味として楽しめるものですよね。
過狩り狩り
鬼滅の刃のベースとなった最初期の作品。
鬼滅の刃に登場する鬼舞辻無惨、珠代さん、愈史郎が登場します。各々のポジションや設定は若干異なるのでしょうが、見た目や能力に関してはすでに固まっていたようです。
本作の敵に相当するキャラクターは西洋の鬼です。いわばドラキュラ。どちらも人の血をすするという共通点があります。
「狩り過ぎれば狩られる」という表現がこの作品にあり、それがタイトルとなっています。
狩りすぎるという対象は人のことで、過狩り狩りは鬼滅の刃でいう鬼殺隊にあたるようです。
つまり鬼が人を狩りすぎれば、鬼殺隊に狩られるということを示していますね。
タイトルを安易に鬼狩りといった風にしないのには理由がありそうです。人を狩らない鬼は過狩り狩りの対象にはならないのでしょうか。
実際鬼滅の刃では珠代さんと愈史郎は鬼殺隊に協力する形をとっており、狩られる対象となっておりません。そして主人公の炭治郎の妹である禰豆子も同様。ですので狩る対象はあくまで人を狩る鬼ということになりますね。
このことからも今後の鬼滅の刃では既存キャラクター以外にも鬼が登場する可能性は十分に考えられますね。最終的には人と鬼の共存を図るという未来も面白いかもしれません。
また、西洋の鬼がこの時点で登場していることから、鬼舞辻無惨編が完結したあとに第二部として西洋の鬼編なんていうのも考えられますね。作者がそこまで構想しているのかわかりませんが、人気作品なので引き伸ばしのアイデアとして十分有り得る話です。
文殊史郎兄弟
吾峠呼世晴先生は本当に個性的なキャラクターを描きますね。
表紙の時点でこれは少年ジャンプらしくないと断言できるほど。
本作に登場するキャラクターも鬼に近いイメージですが、あくまで殺し屋として登場しています。殺し屋としながらも、悪人限定で仕事を請け負っているようです。
冒頭部分で子供の喧嘩に「殺し屋なら殺してくれよ」と子供が頼むシーンがありますが、きれいな肉は食わないといって断っています。依頼主の心臓の音を聞き分けるシーンなんかは鬼滅の刃の吾妻善逸を彷彿とさせます。
思うに吾峠呼世晴先生のなかでの悪の線引きがあって、悪としたものが懲らしめられるという構図があるのだと思います。
依頼を請け負ったあとの数々の戦闘シーンは今の鬼滅の刃と違って少々分かりづらい描写もあり、真に楽しむのには苦労するのですが、微妙にグロテスクでぶっ飛んだキャラ設定というのはジョジョの岸辺露伴を彷彿とさせるものがあります。
しかし最終的に亡くなったものは帰ってこないという現実を突きつけられ、悲しむ静加ちゃんを見ると炭治郎が猗窩座に言ったセリフが蘇りますね。



出典:吾峠呼世晴 鬼滅の刃 65話より
人の命の儚さを表現していると思います。他にもどこか深いところに作者の思いがあるのでしょうが、私程度では表現しきれず、なんとも言えない気分になります。
肋骨さん
邪氣を見る事ができる浄化師の話。常人に見えるものが見えず、その代わりに氣を見ることができる浄化師のアバラの物語。
街に落ちている邪氣を感知しそれを浄化させるというもの。
邪氣を持つ人間との会話のシーンなんかは作者独特のセリフ回しが光りますし、変わり者の主人公の一つ一つの行動は見ていて面白いです。
炭治郎と冨岡義勇の会話みたいな独特のやり取りはこの作者だからできるのでしょうか。
IQが30違う人同士が話をすると噛み合わないなんてことを聞いたことがありますがそんなようなイメージですね。
かつて主人公のアバラを助けた善而(ぜんじ)が登場する回想シーンですが、その真っ直ぐな性格は鬼滅の刃の煉獄さんや炭治郎のようにまっすぐです。
そのまっすぐさがあだとなることもあるのですが、それを本人は損とは思わないところが魅力的ですね。
こうしたまっすぐで魅力的な性格のキャラクターが登場してくるのも吾峠呼世晴先生ならでは。ところどころに鬼滅の刃のエッセンスを感じると楽しくなります。
蠅庭のジグザグ
呪力を使って人を殺す呪殺屋とその呪力を解除する解術屋の話。
解術屋のジグザグ自身にかかっている呪力の話もなかなか深い。
一度読んだだけではなかなら物語の根底部分に到達できない謎の深さがある。
作者自身にその意識があるかないかは別として、作品の結論というかテーマというものを見出したくなります。
結局何が言いたかったのか、なかなかうまく表現できませんが信賞必罰は各作品に共通するテーマに思えますね。
蠅庭のジグザグに関して言えば性悪説みたいなところが見え隠れします。
最後のシーンのジグザグの一言なんかは自分への皮肉も混じった形に見えます。
作者の魅力が1冊に詰まった短編集
4作品ともに独特の世界観で描かれているので万人受けするかというとそうではないと思います。鬼滅の刃が人気になった今だからこそ、作者の初期の作品を楽しめるのだと思います。
各作品に鬼滅の刃のベースが見え隠れしていて読者側からいろんな推測ができるのも楽しいです。
読み切り作品のアイデアがそのまま連載作品に採用されるということはよくある話。
今後の鬼滅の刃でも読み切りで描かれたキャラクターが登場するかもしれませんし、キャラクターの性格や能力を引き継いで別のキャラクターとして登場してくる可能性もあります。
一通り読んだだけでは理解しきれない作品ですので、一回読んで終わりではなく、何度も読み返して楽しむ1冊だと言えます。
表紙の描き下ろしと、中身とでは画風も若干変わっており、作者の成長も見えるので鬼滅の刃が好きな方は一度は手にすべきです。
そして嬉しいことに通常の価格なのに紙質が良いので電子版じゃなくて紙の単行本で購入すべきです。所有欲を満たせます。